6月17日のThe DAO資金流出事件から2週間弱が過ぎ、状況が変化してきた。
移動された資金の扱いを巡り、ソフトフォークやハードフォークを行うべきかの議論がなされて来たが、その後の動きはどのようなものか。
◇“daoattacker”のインタビューと“善意のハッカー”の登場
海外のメディアであるCCNにdaoattackerと思われる人物のインタビューが掲載された。
内容としては以前イーサリアムコミュニティにて公表された内容と今回の行動に関しての詳細であった。
CCNのインタビューによると、今回の行動は単独によるものではなく、複数人が関わっていること。そしてイーサリアム運営チームにより計画されていた事後策であるフォークに対して賛同しないマイナーに対して100万ETHを配るといった趣旨のものだ。
しかしマイナーに対して配ると伝えられたETHについて具体的な受け渡し方法については明示されていない。
また今回The DAOのシステム脆弱性を利用し364万ETHを移動したが、移動後も同様の操作を行うことでETHを移動することは可能だった。だが残りのETHを移動しなかった理由として、全額移動する以前にイーサリアム運営チームから今回のETH移動に対してソフトフォークを行うとの意思が明らかになったからだ。残りのETH移動を完了させることがソフトフォークを実行される可能性を上げるとハゲるとdaoattackerが認識したのでは。
その後もThe DAOのシステム脆弱性は残り続ける状態は続き、数十ETHというわずかな量ではあるが第三者と思われる者による移動も存在した。
そして事件発生から5日後の22日、同様のシステム脆弱性を利用してThe DAO内の残りのETHである763万ETHが移動された。
しかし22日のETH移動についてはイーサリアムチームから理由を明示されており、「Whitehat」と呼ばれる善意のハッカーによるもので残りのThe DAO内ETHを保護する目的で行われたものであるとのこと。
◇イーサリアムチームが予定しているソフトフォーク詳細
上記のように現在The DAO内部に存在するETHはそのほとんどが移動不可能な状態にあり、The DAOの性質上ETHの移動が行われるのは27日後になる。
そのためそれまでのイーサリアムチームの対応に注目が集まりソフトフォークやハードフォークが行われるのかが論点となる。
ソフトフォーク自体は事件当日にプロトタイプとなるコードが公表されており、その後もコードの改良が行われている。そして「1800000番となるブロック以降、一部の例外はあるがThe DAOに蓄えられているETHを全て送受信不可能とする」趣旨となった。
今回提示されたソフトフォーク内容ではETHの動きに関するものなので、DAOトークンの移動についてはソフトフォーク実施後も可能とのこと。
今回ソフトフォークの例外対象となったのはThe DAO管理チームに属するアドレスとなっており、この管理チームのアドレスのみETHの送受信が行える。
そしてソフトフォークが今回の事件への対応となる理由が、脆弱性を利用して管理チームが移動されたETHを再び移動するためだ。
この方法をとった場合、ETHの移動を事件以後に戻すために27日×2として2ヶ月近くが必要となる。また全てのETH移動を完了する前に新たな脆弱性を突かれるなどがありうるため、The DAOチームは事件となったETHの移動を取り消すハードフォークを計画しているとのこと。
ソフトフォークを実行するためには現在ETHのマイニングを行っているマイナーが、新たなバージョンのイーサリアムへアップロードする必要があるため、マイナーの支持を受ける必要がある。
そして今回行われたイーサリアムチームの提案に対して、ETH発掘量の過半数を占めるマイナーグループethermaine、ethpool、dwarpoolはメンバーに対してソフトフォークを支持するか否かの意識調査を行い、多数がソフトフォークを支持するとの意見になった。
今回の調査は各マイナーに参加するメンバーの採掘貢献度に比例して意見の大きさが決められ、3つのマイナーグループの意思は同様の結果となった。マイナーグループメンバーのおよそ4分の1が参加し、参加者のうちソフトフォーク支持者が4分の3との結果。
◇しかしソフトフォークは行われない結果に、その理由とは
マイニンググループの支持が得られ、イーサリアムチームによりソフトフォークが予定されていたが、今回新たに明らかになった内容によるとソフトフォークは行われないとのこと。
その理由としては、今回用意されたコードがDOS攻撃による不正アクセスに対処できないことが発覚したため。
DOS攻撃とはDenial of Services attackの略であり、悪意のある第三者が特定のサービスに対して大量のアクセスを行うことで、サイトが処理できる情報量の上限をオーバーしサイトを表示不可能状態、表示速度を著しく低下させる攻撃を指す。
そのため主要なマイニンググループも新バージョンへのアップデートを行わず、ソフトフォークの実装は見送りとなった。
今回発見されたDOS攻撃に対するコードの脆弱性は、コードの根本となる設計に関わる課題であるため新たに設計段階から作り直す必要があるとのこと。そのためソフトフォークのためのバージョン作成には時間を要し、予定されていたソフトフォークがいつ行われるかは明らかになっていない。
ソフトフォークの実施時期が不確定となったため、次の対応策としてはハードフォークに注目が集まりそうだが、ハードフォークに関する詳細は現段階では公表されていない。
どちらにしろ今回のThe DAO事件に対する対応の期限は27日後の7月14日となる。
今後のイーサリアムチームからの情報に注目したい。
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