仮想通貨「Steem」がビットコイン、イーサリアムに次いで時価総額3位に急上昇している。
仮想通貨Steemとは2016年5月3日にβ版をリリースした、ブロックチェーンを用いたソーシャルメディアプラットフォームである。
以下はSteemを説明する動画である。
Steemを手がけたのはBitSharesの創業と開発を担ったダニエル・ラリマーである。
Steemに用いられているブロックチェーンは、BitShareの核となるGraphenというブロックチェーンエンジンをベースに開発されているが、Steemのために0から開発が行われた。
Steemのユーザーは、Steem上のソーシャルメディアにコンテンツを投稿したり、すでに投稿されているコンテンツに対しキュレーションを行うことができる。そして投稿の内容やキュレーションに応じて仮想通貨が得られる仕組みとなっている。
Steemは「サービス参加者は報酬を受け取るべき」といった理念を持っており、コンシューマー・ジェネレイテッド・メディアに大別されるフェイスブックやツイッター、Redditを例に挙げ参加者がコンテンツを大量生産するサービスが高い市場価値を生むとホワイトペーパーでも触れている。
◇Steemで手に入る3つの仮想通貨とは
Steemにてユーザーは3種類の仮想通貨を手に入れることができる。
- STEEM
Steemプラットフォーム内でのベースとなる仮想通貨がSTEEMだ。このSTEEMが他の仮想通貨の価格を決める。STEEMはビットコインやイーサリアムのように仮想通貨取引所にて流通している。プラットフォーム内で流通する仮想通貨の量を増加することを目的に持つものであり、長期的に保管するものではないとされている。
またSTEEMの持つ特徴として24時間で0.19%ずつ価値が低下していくため次項のSteem Powerに変えるのが効率的とされている。価値が低下する理由としてSTEEMの量が定期的に増加していくからである。
- Steem Power
Steem PowerはSPとも略され、Steemプラットフォームを使うために利用される。STEEMをSteem Powerに交換することには時間がかからないが、逆に交換する場合は104分の1ずつしか行えない。これは1年=54週とし、全てを交換するためには2年間の時間が必要となっている。
またSteem Powerの最も大きな特徴として、他のユーザーに対し送金することができない。
Steem Powerは現在の仮想通貨の一般的な購入目的である、短期売買の利益を目的とする取引を避けるために存在している。
先に述べたSTEEMは1年でほぼ10割といった高い割合で供給量が増えていくため、インフレしていく特徴も持っている。
そして新たに増えていくSTEEMの多くはSteem Powerを持っているものにSteem Powerとして渡る。つまりSteem Power保有者は利息に似た形式でSteem Powerが増えていくと考えればよい。
このように資産として持つにはSteem Powerとして保有するのがよい。なぜならSTEEMとして保有していると価値が減少していくだけでなく、利息を受け取ることができないからだ。
他の特徴としては、Steamプラットフォームのユーザーが受け取る報酬の5割はSteem Powerの形で受け取るため、他の仮想通貨のように早く売ることのメリットが少なくなる。
- Steem Dollars(SMD)
最後に紹介する仮想通貨はSteem Dollarsと呼ばれるもので、SMDと略される。
Steem Dollarsの大きな特徴としては、価格が常に1$と固定されている点だ。
先に述べた、Steemプラットフォームを利用するユーザーが受け取る通貨の5割はSteem Powerだが、残りはSteem Dollarsだ。そしてSteem Powerは週に104分の1ずつしかSTEEMに交換することができず、また他のユーザーに送ることもできない。
そのためSteemプラットフォームを利用し得た利益を法定通貨へ換金するためにはSteem Dollarsに交換して行う必要がある。
そしてSteemプラットフォームにはSTEEMとSteem Dollarsを交換するための取引所も存在する。これを利用し1STEEMを1Steem Dollarsとして交換し他ユーザーなどに送金することもできる。Steem Dollarsは他者への送金を禁じられていないためだ。
またSteem Dollarsの特徴としてはSteem Powerと同じように、持っているだけで利息のようにSteem Dollarsを受け取ることができるため、資産を貯めるためにも利用しやすい。
◇Steem内にて仮想通貨を報酬として受け取るにはどのような方法があるか
先に述べたように、ユーザーが受け取ることのできる報酬はSteem PowerとSteem Dollarsが半々となり受け取る。
報酬は24時間で一回受け取ることができるようになっている。
- Steem内ソーシャルメディアでのコンテンツ作成及びコメント執筆
Steem内にあるソーシャリメディアにてユーザーとしてコンテンツを作成したり、他ユーザーが作成したコンテンツに対してコメントをつけた場合に報酬が発生する。しかし、どのようなコンテンツ、コメントでも良いというわけではなく他ユーザーから価値があると判断された場合、票を獲得することができる。そして得た票の数によって報酬が支払われる。
- Steem内ソーシャルメディアに作成されたコンテンツやコメントに対する投票
Steemに作成されたコンテンツやそれに対するコメントへ、票を入れると報酬が発生する。票を入れる際、ユーザーは持っているSteem Powerの総量によって一票の大きさが変更できる。
このシステムは投票数を稼ぐことで多くの報酬を得ようとするユーザーの行為を防ぐために導入されており、1ユーザーが多くのコンテンツやコメントに投票するごとに1つの投票の大きさは、投票数に反比例して小さくなります。
コンテンツやコメントに対して票を入れて得られる報酬は、多く票を集める人気投稿ほど、票を入れたユーザーに対して払われる報酬も多くなる。またコンテンツやコメントが作成されてから票を入れるまでの時間も報酬に関わっており、コンテンツ・コメント作成から票を入れるまでの時間が短いほど高報酬となる。
またこれらのシステム概念はProof of Stakeの理念とも似ており、システムの構造自体がサービスの価値を高めるように設定されている。つまりSteem内ソーシャルメディアの価値が低品質なコンテンツが増えるなどして下がった場合、最もその影響を受けるのはSteem Powerを多く保有するユーザーだ。
そのため影響力の大きい票を持つ、多くのSteem Powerを持つユーザーは優れたコンテンツを探して票を入れる効果を期待するシステムとなる。
ここに挙げたもの以外にも他の仮想通貨と同様にマイニングを行う、STEEMとSteem Dollarsを扱う取引所を利用する、またSteem PowerやSteem Dollarsを所有する事で得られる利息として報酬を得る事ができる。
◇Steemの報酬が発生するメカニズムとは
ここまでSteemを利用する事によって得られる報酬や得るための報酬について説明を行ったが、ではユーザーが受け取る報酬はどこから支払われるのか。
この報酬の発生方法がSteemという仮想通貨の大きな特徴を決定づけているが、ユーザーに支払われる報酬はその都度仮想通貨を新たに発行することで賄われている。
そのためSteemが1年ごとに10割増加し、発行量が増加することでインフレーションを起こしやすいと懸念される理由でもある。
このような形式をとる場合、Steemの量が増加して価値が落ちる速度を除外できるほど新たなユーザーがSteemを利用すれば問題はない。
しかし新規ユーザーは無限に増えていくわけではない。そのため継続的に価値ある報酬を提供できるシステムなのかは議論の余地が残るところだ。
ブロックチェーンを利用したソーシャルメディアとして新たなサービスが出てきたが、今後どのような動きを見せるか。
追記:Steemitがハッキングに遭い1千万円に当たるSteem Dollarsが被害にあったとのこと。総量に比べると被害はわずかなものであり、詳細は調査中。
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