イーサリアムがハードフォーク実施、その後の影響は

イーサリアムがThe DAO事件への対応として7月20日の午後10時半頃、不正と判断された送金を取り消すことを目的にハードフォークを行った。

事前にアナウンスされた内容によるとイーサリアムブロックチェーンのブロックが192万番目に到達した時点でハードフォークを行うとしていた。

◇今回イーサリアムがハードフォーク実施に至った背景

繰り返しになるが、今回イーサリアム運営チームが非中央集権システムの理念に反するとの意見もあるハードフォークを実行するに至ったのはThe DAOと呼ばれるプロジェクトにて特定の攻撃者による不正送金が発覚したためだ。

The DAOプロジェクトはドイツに本拠地を置くSlock.it社が進めており、ブロックチェーンを用いた非中央集権型の投資ファンドとして4月末のプロジェクトリリース後注目を集めていた。

その後“クリエイション”と呼ばれるクラウドファンディングが行われ、5月末の終了時点でクラウドファンディングの歴史としても最高金額となる150億円相当のETHを集めたことも記憶に新しい。

しかしその後、6月の中旬になるとThe DAO内システムの欠点を利用した“攻撃者”によりクラウドファンディングにより集めた金額のおよそ3分の1に相当する50億円分ほどのETHが不正に送金されたことが発覚した。

その後“ホワイトハッカー”と呼ばれる善意のハッカーたちの働きかけもあり残った ETHの移動が行われるなどし今回のハードフォーク実施、不正と判断された送金を取り消す措置が取られた。

また今回ハードフォークを行う以前にソフトフォークと呼ばれる、“攻撃者”の所有するETHの移動を凍結する対応策が検討されたこともあったが、システム上に欠陥が見つかり、見送られることとなった。

そして特定の管理者を持たない分散型システムの理念通り「“攻撃者”の行動に対しイーサリアムチームは対応を行うべきでない」との意見もあった。

しかしイーサリアムチームのハードフォーク実施を望む人々は「今後イーサリアムがバージョンアップを重ね、予定通りProof of Stake(所有するETHの量に応じて利息に似た形で新たにETHが手に入るシステム方式)を導入した場合、“攻撃者”が多くのETHを持っているべきではない」、「対応を行わないとしては、金額が大きすぎる」、「成長段階にあるイーサリアムの今後の発展可能性を狭めてしまう」などの主張をした。

その後The DAO保有者を対象にした意識調査によると97%のThe DAOユーザーがハードフォークを望んでいることが判明し、ハードフォーク実施がより現実的なものとなった。

今回のハードフォーク実施に際して、ThE DAOプロジェクトの運営を行うSlock.itからは「行われるハードフォークはイーサリアムのブロックチェーンに記録される全ての取引を特定時点へ戻すものではなく、The DAOプロジェクトに紐づく取引のみが対象となる。なのでThe DAOプロジェクト外のイーサリアムは対象とならない。The DAOプロジェクト内の、脆弱性が指摘された子DAOへ移動されたETHがハードフォークの対象となり、出金用のDAOへ送信される。そのためあらかじめ伝えられている通り100DAOが1ETHの割合で手元に戻る。」と説明があった。

国内外でETH取引を対象としている仮想通貨取引所では、ハードフォークをが行われる1時間ほど前から有効なチェーンが判断できるまでETHの移動が行えなくなるとのニュース発信している取引所も多かった。ETHの取引再開時刻が明らかになっている取引所ではcoincheckが21日の午前3時から取引を再開していた。

そしてKraken取引所では自らのウォレット内にETHを保有しているユーザーはハードフォークが行なわれている期間はETHの移動を行わないことと、ウォレット自体を最も新しいものに更新しておくことを伝えられた。

◇そしてイーサリアムが7月20日、午後10時半頃にハードフォーク実施と今後の動き

事前に告知されていた通り、イーサリアムのブロクチェーンが192万番目に達したタイミングにてハードフォークが行われた。

今回のハードフォーク実施後の、元のETH保有者へETHを戻すためのリカバリーコントラクトへ1200万ETHが送信された。

今回移動されたETHは“攻撃者”が移動させたETH、そして前述のホワイトハッカーによって移動されたETHの合計となっている。

イーサリアムによって行われたハードフォークは問題なく終了し、ETHの取引を行う取引所でも以前通りETH取引業務を開始している。

ハードフォーク終了後イーサリアムから公表された情報によると、450万のETHがすでに元の持ち主に戻され46万ほどのETHはキュレーターが保有しているとのこと。

キュレーターとなっているのはイーサリアム創業者のVitalik Buterin氏などDAOユーザーによって選定されたシステム管理を行う者たちとのこと。

今回The DAOで発生した事態は、今後のイーサリアムプラットフォームにとって非常に重要な示唆に富んでいる。

イーサリアムプラットフォーム上に数多くある内のひとつのスマートコントラクトであるThe DAO内で起きた出来事の波紋が、イーサリアム全体へ波及しついに運営チームがハードフォークを実施するという結果になった。

非中央管理の分散型システムを理念としていたイーサリアムは今後どのような評価を受けるのか。

そして渦中となったThe DAOプロジェクトの運営を行っていたSlock.it社の創業者、そして開発責任者であるChristoph Jentzch氏は来週来日しスマートコントラクト・カンファレンスへ出席する予定だ。

今回の事件に対してのコメントがなされるだろうか。

脆弱性が発見されたとはいえ、150億の資金を集めたチームは今後どのような動きを見せるのか。

【関連ニュース】

 

Pocket
LINEで送る

Be the first to comment

Leave a Reply

Your email address will not be published.


*