「Augur(オーガー)」とは何か スマートコントラクトの大本命

 

◇オーガーとは予測市場を運営するためのプラットフォームシステム

Augur(オーガー)とはイーサリアムのスマートコントラクトプロジェクトの1つで、ユーザーが予測市場へ参加するためのプラットフォームシステム。

現在20代前半でありながら、イーサリアムの共同創業者の一人であるVitalik Buterinがアドバイザーを務める。「augur」とは占い師を意味する英語の名詞。

予測市場のみならず、保険の分野に対しイノベーションを起こす可能性も期待されている。そしてブックメーカーと呼ばれるギャンブルを提供するサービスをDAOとしてクリーンに運営できるとされる。

 

以下は堀江貴文による、Augurへ言及した動画。

 

  • 予測市場とは未来の結果を商品としたマーケット

オーガーが提供する予測市場とは株式市場などに代表される先物市場の1つである。

将来起こる事柄の結果に対し、それぞれの参加者が予測した結果へ投票する権利を購入し、投票する。そして実際に起こった結果によって、予測が当たった参加者に対して利益が分配される。株式市場では利益の分配が行われないので、その点において予測市場と株式市場は異なると言える。

 

◇なぜオーガーが注目を集めるのか

  • “群衆の英知”を利用した、未来予測のためのツール

群衆の英知とは2004年にジェームズ・スロウィッキーが著書にて提唱された概念である。スロウィッキーは著書の中で、ある命題に対し専門家でない不特定多数による多数決の方が、専門家1人による判断に勝ることを統計的に説明した。

インターネットの発達と共にグーグルやウィキペディアに代表されるWeb2.0の有用性と合わせて語られることも多い。

現在ではグーグルが過去の情報のデータベース的役割を果たしているが、それと対を成すように未来の情報に関してはオーガーを参考にすれば良いとする専門家もいる。

  • ブックメーカーの仕組みをブロックチェーンの公平性にて

ブックメーカーとは賭博において掛け率の設定や配当を行う役割のこと。

日本では刑法により賭博行為を禁じられているため馴染みは薄く、ノーベル文学賞発表前に海外のブックメーカーの予測に日本人の名前が挙がったと報道される程度である。

しかし海外では政府公認で事業を行ったり上場を果たす企業、また有名フットボールクラブチームのスポンサーを務めるブックメーカー企業も存在するなど文化として定着している。

そしてこのブックメーカーの課題点とされるのが、人の手で運営されることによる、恣意性の排除である。人が運営に関わることで、八百長疑惑や詐欺疑惑が問題となることもある。つまり胴元の利益を増やすためのサービスコントロールを、胴元が行うかもしれないという疑惑だ。

それらを完全に排除することは困難かもしれないが、オーガーではスマートコントラクトで以下の事柄を自動で運営するため、公平性が高まると言える。

  • サービス参加者が自由にイベント(賭け事)を作成できる
  • サービス参加者が特別な権限を必要とせず、イベントへ参加することができる
  • イベントの結果を、イベント作成者以外が判断する
  • イベント結果による配当金の分配を、システムが行う

イベントの結果判断には「レポーター」と呼ばれる人々が役割を果たす。つまり、レポーターの多数決によりイベントの結果が決まるのだ。

レポーターとして登録する際には一定量の保証金を用意する必要がある。

イベントの結果投票時に正解の結果となる、レポーター多数決により過半数を超えた選択肢を選んだレポーターは報酬を得る。そして、レポーター投票が少数となる結果に投票したレポーターは保証金を失う。そのためレポーターとして参加する者たちは、事実に即した結果を報告することが動機付けされている。

このようなレポーターシステムを導入することでオーガーは賭け事を行う際の公平性を明確にした。

 

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◇オーガーの秘める可能性、保険業界へのイノベーション

オーガーが注目される最大の理由の1つが、ブロックチェーンが金融業界のシステムを作り替えるように、保険業界のビジネスモデルを根本から再構築する可能性があるからだ。

これはギャンブルと保険の仕組みが酷似しているためである。先述の動画の中で堀江貴文氏が言及するように、保険会社とは元々、航海技術が発達していなかった時代に商船が目的地へ着くか否かを掛けることが起源だ。

現在の保険は、大半が以下のようになっている。

  1. 一定の周期で保険料を払い続けることで保険のシステム参加する
  2. 決められた期間内に病気にならなかった場合は保険料は返らない
  3. 病気などにかかった際に、医者などが結果の判断を行う
  4. 結果が正しいと保険会社に判断されれば保険金が支払われる

これをオーガーでのイベントに置き換えていると以下のようになる。

  1. 自らが近く病気にかかると予想し、掛け金を払い参加し続ける
  2. イベントの期間内に健康であれば賭け金は没収される
  3. 病気にかかった際に、医者などが結果の判断を行う
  4. 医者をレポーターとし、結果が正しいと判断されれば、配当金が支払われる

以上のように保険システムとオーガーなどで行われるギャンブルとは共通点が多いとされる。

そして、オーガーが評価される点は上記の手続きに、保険会社というシステムは必要なく、すべてがスマートコントラクト上で完結する点だ。

しかし、実際に保険業務へ適用される際には結果の判断の信頼性など、課題とされる点は多い。レポーターの判断方法など実際の運用方法は未知であるが、もしかしたら今後保険会社がイーサリアムプラットフォームを導入するときがくるかもしれない。

そして保険と同様、デリバティブへの応用も期待されている。

 

◇オーガーが孕むリスク

日本では刑法で賭博行為が禁止されており、実際に賭博行為を行うには特別な許可が必要となる。

現在でもインターネットにて賭博行為が可能なオンラインカジノサービスは、賭博行為であるがサーバー自体は海外に置かれているため、日本の法律の適用範囲にならないとする専門家もいる。実際に日本からの参加者が行っている行為がパソコンを操作するのみであるからだ。

しかし厳密に定義する法律がなく、違法か否かを規制する法律が存在しないため現在では違法とされていないに留まる。

そのため今後のオーガーの市場への影響などによっては、日本政府から規制が加わるかもしれない。

以上の様にギャンブル的要素に対する規制が焦点となるが、今後の発展が期待される。

 

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