先月末アメリカにて行われた国際的な証券会社が集まるフォーラムで、証券業界が考えるブロックチェーン技術導入の見通しが明らかとなった。
ボストンにて開かれたInternational Securities Association For Institutional Trade Communication (ISITC)では昨今のFinTech技術の盛り上がりと合わせて、ブロックチェーン技術に対する証券会社の展望を議論する場面があった。
今回のフォーラムでは参加者によるパネルディカッションが大きな注目を集めた。
1、2年以内には実際の業務へ導入可能なレベルのブロックチェーンサービスが提供されるだろう、といった話も出た。
金融経済学を専門とする学者、Milneの「近年の技術発達による影響を最も受けるのは有価証券の市場か?迅速に影響を受けるのは小売業における決済サービスと予測されるが、それは各国の中央銀行のによる影響も大きい」といった質問に対してデジタルアセットホールディングス社に在籍するChurchが「技術の導入などが一定の水準に達する“転換点”に至るにはおそらく10年掛かる」と答え、こう繋げた。
「2015年からブロックチェーンの開発がスタートしたとすると、今年2016年は実証実験のフェイズだ。おそらく来年2017年に初の業務用アプリケーションが市場に姿を表し、一般に普及するのは2020年頃だろう。その後2025年にはブロックチェーン市場は1つの転換点が訪れる。今から10年後が1つのターニングポイントとなる。」
また世界40のメジャー銀行とコンソーシアムを組みブロックチェーン研究を進めているR3CEV社のMcDonaldは、「金融機関のためのブロックチェーンプラットフォームについては今年2016年はベースを固めるフェイズにあり、来年2017年には大きな発表があるだろう。つまり今年は金融機関向けブロックチェーンサービスについては業務用アオプリケーションシステムが発表されることはないが、来年には多くのニュースが届くだろう」とか語った。
◇今後のブロックチェーン業界の動きは
そして議論はより具体的な方向へ向かった。R3CEV社とデジタルアセットホールディングスがともに関わるR3コンソーシアムについてだ。DTCC社のPalatnickはR3社のMcDonaldへ質問した「現段階のブロックチェーン研究の進捗状況は?」
これを受けてMcDonaldは「我々が苦心しているのは、多くの銀行をどのように統一プラットフォームに乗せるか、ということだ。それに比べれば、先の話題である市場にインパクトを与えるためのテクノロジー的な課題は、大した問題ではない」とした。
そしてChurchはパネルディスカッションにおいて自社が寄与しているオープンソースのブロックチェーンプロジェクトである「Hyperledger」についても触れた。彼は「ファブリック」という言葉をキーワードとして捉えている。ファブリックとはブロックチェーンサービスの開発者にとってブロックチェーンネットワークへのアクセスのしやすさを表す言葉として使われる。
「ブロックチェーン業界に必要なものの1つとしてテクノロジー業界にとって有益なデファクト・ファブリックが必要だ。そしてHyperledgerがコアなファブリックとなってくれることを期待している。ブロックチェーン技術は、我々が今まで利用していたテクノロジーを作り変えてしまうものではない。我々が今まで積み重ねたものの上に、新たに積み重なるものなのだから」
Charchはブロックチェーン技術を革新的な技術と捉えつつ、現在ある技術との融和性に重きを置いているようだ。タイミングとしてJavaScriptを利用してサイドチェーンアプリなどを開発可能なLiskが注目を集めているため、その辺りへCharchの意識は向いているのかもしれない。
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