ウェブブラウザFirefoxを提供するMozilla社を離れたブレンダン・アイク氏が手掛けている、新たなウェブブラウザ「Brave」ブラウザサービスプロジェクトの製品リリースが近づいている。
Mozillaの共同創業者でもあるブレンダン・アイク氏はプログラミング言語JavaScriptの開発者であり、新たなウェブブラウザの開発に着手したことで話題となっていた。
すでにブラウザサービスは数多くリリースされており、Firefox以外にもWindowsへ搭載されているInternet ExplorerやEdge、MacとiOSへ搭載されているSafari、ヨーロッパにて人気のOperaなどが市場のシェアを占めている。先日にはOperaの創設者であるヨン・フォン・テッツナー氏が新たなブラウザ「Vivaldi」をリリースしたニュースもあった。すでに出揃っていると思われていたブラウザサービスの中で「Brave」にはどのような特徴があるのだろうか。
◇Braveは広告モデルを再構築するのか
アイク氏が今までのブラウザに感じてきた課題意識は、ブラウザに表示される広告を取り巻くビジネスモデルだった。
今回アイク氏が提案しtのはブラウザユーザーへの広告表示によりコンテンツ制作者のみが利益を得る既存の広告モデルではなく、広告による利益をブラウザユーザー、コンテンツ制作者、ブラウザ制作者で分け合うものだ。
新ブラウザのBraveは現在普及している広告ブロッキングを備えており、ウェブサイトを利用すると目に入る大げさな広告をブロックすることができる。そのかわりに質素な広告を表示することをBraveユーザーが選択できる。
そして広告を表示することを選んだ場合、Braveユーザーにも広告料が支払われるというものだ。
広告料の配分としてはBraveプロジェクトへ登録したウェブサイト制作者が55%、そしてBraveと広告代理店とユーザーが15%ずつを手に入れる。支払いを受け取るためにはユーザーはメールアドレスや電話番号の登録を済ませる必要があり、ウェブサイトの登録者は追加の情報登録や審査が必要だ。
アイク氏はどのような意図を持って今回のブラウザ、Braveのコンセプトを作ったのか。それは今後広告ブロッキング機能がさらに普及した場合、ウェブサイト制作者への利益が減少しウェブコンテンツの制作が行われなくなることを懸念しているようだ。そのためウェブコンテンツ制作者のみではなく、サイトユーザーにも利益をもたらす広告モデルの提案を行った。
果たしてBraveは新たなビジネスモデルを構築するのか。今までの広告モデルを過去のものとするのだろうか。
Braveバージョン1.0のリリースは来月5月を予定している。
以下はBraveの対応OSの一覧となる。
- Windows
- Mac
- Linux
- iOS
- Android
◇ビットコインブラウザ、Braveに対する新聞業界の反発
先日知らせた元Mozilla社、同社共同創業者のブレンダン・アイク氏が開発中のブラウザ「Brave」がその後新聞業界から反発を受けていることが明らかになった。
Braveが注目されることとなった理由の一つは広告ブロック機能だが今回焦点になったのは、今後予定されているBraveユーザーが広告の閲覧を選択した場合にビットコインが手に入る機能のようだ。
ユーザが広告を閲覧することでビットコインが取得できる機能に対して、米国の主要な新聞社など17の団体が参加する米国新聞協会(NAA)が法律違反である、とし停止勧告書を送付する事態となった。
NAAの勧告書によると「我々の作成したコンテンツを利用してBraveにて広告を売るプランは、Braveが我々のコンテンツを盗用して公開することと同義となる」
以前発表されたBraveの収益モデルによると出版社などコンテンツ制作者に対して55%の広告料が収められ、残りの45%をBrave、サードパーティ、Braveユーザーが15%ずつ分配するというものだった。
Braveプロジェクトチームはすでに250万ドルの資金調達に成功している。
今回Brave側へ送付された勧告書の内容は、Brave側が不正競争及び契約違反であるとしその責任を果たすべきだと新聞協会が主張している。
合わせて新聞協会は「広告の置き換えを行うBraveのプロジェクトは契約違反であり、我々の運営するサイトへの不正アクセスや不正競争を行うことへの責任を負うべきだ」とのコメントを発表している。
◇BraveとNAAのすれ違う理解◇
それに対してBraveプロジェクトチームは以下の内容の発表を行った。
「NAAが今回我々に対して送付してきた勧告書の内容はBraveに対する誤った理解に端を発している。Braveとは現状の課題に対する一つのソリューションを示しているのみであり、NAAの敵というわけではない。
NAAが送付した勧告書の主張は“ウェブにて表示される広告をブロックし転換するブラウザは、ウェブコンテンツを不正に再発行している”とのことだ。この主張に対しては、我々は誤りであると指摘したい。
なぜならばユーザーへのネット接続の終点であり、出版社が発表するニュースなどのコンテンツをどのように表示するかを受け持っているのはユーザーエージェントなのだから。なのでブラウザはソースに関わらずどのようなコンテンツでも再配置、利用をすることが可能だ。
Braveも同様であり、我々がNAAの主張する“再発行”に該当するのならば、広告表示をブロックする機能を有するブラウザは“再発行”の対象となる。画像を表示せずリンクテキストのみを表示するブラウザや、視覚障碍者のための画面読み上げ用ソフトウェアも同様に対象となる。
1月にプロトタイプをリリースした後、Braveの収益をグラフ化したものを発表したが、NAAは“収入の不特定な割合”をシェアするという間違った理解をした。我々はその中で最も大きかった部分を(ジョークのつもりで)ウェブサイトにて公開した。
Braveのビジネスモデルでは出版社などのコンテンツ制作者への広告収入は従来のビジネスモデルの平均を超えている。Braveは15%を手にし、Braveユーザーが15%を受け取るか寄付するかを選択する。ユーザーが利益を受け取っても55%がサイト運営社にわたるが、これも従来のビジネスモデルの平均といわれる40%よりも高い数値となっている。
NAAがブラウザに表示される広告をブロックするサービスにより、従来のビジネスモデルへ与えるダメージを危惧しているのはわかる。
だが、その話題はBraveの登場する以前から存在するものだ。
今回のNAAの主張である、Braveが“コンテンツの再発行を行っている”ことに対しては我々はNOと答える。
Braveには出版社などコンテンツ制作者に対してもフェアで、きちんと秩序立てられたプランがあるということを述べたい。我々が意図しているのは既存の広告に比べ進歩し、必要最低限で、ユーザーの個人情報を保護できる広告だ。
そして終わりに、悪意を持った広告テクノロジーによってNew York TimesとBCCのサイトへ不正な広告が掲示されたことについて触れる。既存のトラッカーデータをベースにした広告テクノロジーは、出版社などコンテンツ制作者の持つブランドイメージを傷付け、ユーザーがブラウザへ広告ブロックサービスを取り入れる原因のひとつとなっている。
Braveはそれらブランドイメージに対する無用の損害からも出版社を守る。
強調したいのは、今回の勧告書はBraveのみならず広告ブロックサービスを提供するすべての企業に対するNAAからの宣戦布告だということだ。他にNAAからBraveへのアクセスはないが、Braveのサービスを用いて互いに有益なパートナーシップを締結できるのかコミュニケーションが取れることを祈る。
我々は進歩した広告システムを望むすべてのインターネットユーザーの側に立つ」
既存のビジネスモデルを再構築する可能性を秘めた「Brave」。
今回のNAA側からの勧告も、業界に与えるインパクトの大きさを象徴していると言えるのではないか。
今後の続報が期待される。
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